お知らせ
リレーエッセイ⑥
____心の灯___
63歳 男性
2014 年 5 月 26 日、我が家の日常は大きく変わった。
母が左視床出血で倒れ、命はとりとめたものの右側身体にマヒが残り、全介助を必要とする状態となった。
それから医療機関による懸命な治療とリハビリが始まった。
一人っ子の私はその付添いのため仕事を変えた。
脳にかなりのダメージが残り半身マヒに加えて認知症や失語症も発症する中で本人による強いリハビリ拒否があったからだ。
経口摂取までの回復を願い、胃瘻手術を避け経鼻経管による水分や栄養・薬品の摂取をしながらの嚥下訓練もした。
今から思えば、その時の母は薄れていく自我のなかで想像を絶するほどの絶望的時間を過ごしていたのだろう。
それから8年後の 2022 年1月 18 日、私がこの世で一番好きだった母は天に召されました。
母を亡くした喪失感はずっと続いている。
そしてその母の死を契機に、私がより長い時間を費やした「昭和」という時代がますます過去に遠ざかった。
時代は移ろいその中で価値観はずいぶんと変わった。 グローバル社会の名のもとにグイグイと経済を引っ張っていた資本主義に陰りが見え、世界的に格差が分断を産み混沌とした社会情勢の時代となった。
私の感覚だが阪神淡路大震災から、世界中で自然災害が頻発するようになったように思える。
それどころかパンデミックが世界を覆い、人々の日常を変え、コミュニケーションを断ち切った。
挙句の果てに、20 世紀のナショナリズムの世界に逆戻りするかのような武力行使による戦争まで見せつけられている。
後世から見たらきっとすごい時代なのだろう。
ましてや年を重ね同じ時代を生きてきた人もどんどんいなくなるような場景においては、流石に見える景色が変わってくる。
「母さん、昔は不便なことも多かったけどいい時代だったよね。」って思わず呟きたくなる。
後ろには夢が無いことも分かっている。
想像だにできなかった前人未到の大谷翔平さんの二刀流や藤井八段の八冠など、人々を勇気づける人物も出てきて、暗い空気をバーッと明るく変えてくれる現実もある。
第二の人生やら終活やら・・・はいはい区切りを付けることも憶えておきましょう。
でも自分の未来をつくるのは自分からと思うので「これからでしょ」ってスタンスで常に生きたい。
大谷くんやら藤井くんのように多くの人に勇気を与えることはできないが、周りの人の景色を少しでも変えれたらいいと思う。
孤立から離れ、未来を描ける社会にまずはしたいものだ。